レース回顧 宝塚記念

阪神の内回り芝2200mで争われた上半期のグランプリ競走。芝は開催4週目で、Bコース使用2週目だった。週中に結構な量の降雨があり、良馬場でも少しタフな馬場状態だった。

いきなりゲートで波乱が起きた。同一GI3連覇を狙う断然人気のゴールドシップが立ち上がって大きく出遅れ、早々と圏外に消えた。ただ、ゴールドがゲートで悪さをするのはよくあること。場内からは悲鳴に近いため息がわいたが、みな「またやったか」という思いだったろう。ゴールドは結局、見せ場なく15着に敗れている。

ハナを奪ってレースを先導したのはレッドデイヴィスだった。3ハロンのラップは36秒0と特別に遅くなかったが、中盤でペースを落とし、1000m通過が62秒5という大きい数字になった。後半残り800mからピッチが上がり、ここからの3ハロンが11秒7-11秒0-11秒6。ラスト1ハロンは阪神らしく12秒4とかかることになった。

栄冠を手にしたのは6番人気の5歳のラブリーデイ。今年に入って重賞を3勝していて、勢いそのままにGI初制覇を成し遂げた。2着は10番人気の5歳牝馬デニムアンドルビーで、3着は11番人気の4歳牝馬ショウナンパンドラ。3連単は52万馬券になった。

◆1着 ラブリーデイ(6番人気・16番枠) 川田将雅
大外16番枠、ヤネは昨夏の七夕賞(6着)以来の騎乗となった川田将雅(同馬で(2.2.0.3))。1つ内でゴールドが暴れる中、上々のスタートを切り、すぐにトモが入ってスッと出ていく。川田は馬の気持ちに任せて無理には引っ張らず、2番手に上がって抑えにかかった。

道中は川田が軽く抱えるぐらいで感触の良い追走ぶりだった。ペースが落ちた中盤も適度に息を入れて走れていた。後半のコーナーも手応えは楽で、直線に入る少し前から川田が軽くうながして気合を乗せていった。

直線に向いてハミがかりを強くしていき、残り300mで先頭に並びかけて川田が本気の追いに入る。ラブリーは脚を使ってグッと抜け出し、200mからの坂もしっかりと登った。

100mで勝負は決まったようなムード。最後はさすがに苦しくなって脚色が鈍ったが、追い込んできたデニムアンドルビーを押さえて1着でゴールに飛び込んだ。着差はクビで、勝ち時計は2分14秒4(良)。自身の上がりは34秒8だった。

5歳になって中山金杯(レコード)、京都記念、鳴尾記念を勝ち、ついにGIを獲ってしまった。素晴らしい本格ぶり。秋には米のブリーダーズCターフ(10月31日)に挑戦することを考えているという。GIホースになったラブリーの今後の歩みが本当に楽しみだ。

◆2着 デニムアンドルビー(10番人気・6番枠) 浜中俊
6番枠からのスタート、ヤネは4歳の秋のジャパンカップ(ハナ差の2着)からコンビを組んでいる浜中俊。ゲート内で浜中は外のゴールドが暴れているのをチラチラと見ていた。ゲートを五分に出、行かせずに自然とポジションが下がる。その過程でも浜中はゴールドの動向を確認していた。

そのゴールドはずっと後ろになり、デニムは後方2番手でバラけたところをポツンと進む形になった。道中はリラックスした走りで十分に脚が溜まっていた。3コーナーに来て少し上がり、1頭置いてゴールドが外から動いてくる。これを特に意識することはなく、ずっと内めで我慢させていた。

直線に向かう少し前の地点で、浜中が大きく外に出していった。もちろんコースロスはあったわけだが、馬を動かしにかかりながらスムーズに外に行ったので、大きなロスにはならなかった。

直線は最外を伸ばし、デニムはしっかり脚勢を強める。残り200mを過ぎると目立つ脚でグイグイと伸び、最後はラブリーにクビまで迫って2着でゴールした。自身の上がりはメンバー中で断トツに速い34秒0だった。

緩めの流れの中でじっくりと切れ味を温存し、直線で爆発させるという、この馬にとって理想的な競馬ができた。パワーが必要な阪神も合っている。5歳になった牝馬だが、まだまだ活躍してくれそうだ。

◆3着 ショウナンパンドラ(11番人気・1番枠) 池添謙一
最内1番枠、ヤネはテン乗りで池添謙一。ゲート内で後ろ脚を少し踏ん張っていたが、上々のスタートを切ることができた。池添は押して出していき、次に手綱を抑える。2号馬のトーセンスターダムに前に入られ、1コーナーに入って好位の後ろ、中位の少し前でポジションを固定させた。

道中は適度に気持ちが乗ってリズムの良い追走ぶりだった。インは馬場が緩かったはずだが、気にしている様子はまったくなかった。後半のコーナーに入ってもスムーズで、4コーナーから少し手を押して気合を乗せていった。

ここで前のスターダムが少し邪魔になっている感じ。直線もスターダムを抜くのに外に動かすか内に動かすか迷い、結局はラチ沿いに突っ込ませた。パンドラは窮屈なところをしっかりと伸び、渋太く3着に上がってゴールした。

いつも栗東の坂路で動くが、今回の最終追いでは推進力十分にグイグイと伸びていた。出走馬の中でデキに関しては一番ではないかと思えるほどだった。56キロを背負って牡馬混合のGIで好走した意味は大きい。4歳でまだ強くなっていくだろう。

◆15着 ゴールドシップ(1番人気・15番枠) 横山典弘
外の15番枠、ヤネは春の天皇賞勝ちに続いて横山典弘。ゲートに入ってから落ち着いていたのだが、最後にラブリーが入るとうるさくなって立ち上がる。収まったところでスターターがスタートを切らせたが、また立ち上がってしまい、結果、大きく出遅れることとなった。

出遅れ幅は2秒ほど。大きく置かれ、もう完全に圏外だった。中盤に来て向正面も中ほどを過ぎるとノリが動かしていき、3コーナーで外から馬群に取りついた。

4コーナーに来てノリが手を動かしたが、ゴールドの反応は薄かった。気力が残っていなかったか、単に気持ちが前に向いていなかったか、それとも体力が切れていたのか、はっきりとはわからない。そこからノリはほとんで追っていなかった。今後のことを考え、負担をかけたくなかったのだろう。

天皇賞でゲートに入ろうとせずに発走調教再審査を課せられ、また審査を受けることになった。今後のローテーションは白紙である。