レース回顧 函館スプリントS

函館の芝1200mで争われたG3競走。芝は開幕週でAコース使用になり、前日の土曜には芝2600mでレコード(2分38秒7)が出ていた。

函館の直線距離はJRA10場の中で最も短い262.1m(Aコース使用時)。一流馬が戦うには箱が小さすぎで、残念ながら“スムーズに運べるかどうか”という不確定な要素が最重要ポイントになる。昨年の当レースは、うまく捌いた人気薄の差し馬が上位を占めて、3連単が87万馬券になった。

アンバルブライベンが逃げると思われていたが、最内1番枠のフギンが好ダッシュからハナを奪った。ブライベンは2番手の外で、前半3ハロンは11秒7-10秒3-11秒0の33秒0という速さになった。

ハイペースで流れた結果、レースは昨年のように差し馬が台頭することとなった。1着は最後方追走からマクり気味に進出して外から一気に抜け出した4番人気のティーハーフ。2着は14番人気のアーソニック、3着は12番人気のレンイングランドで、3連単は昨年を上回って94万馬券になった。

◆1着 ティーハーフ(4番人気・9番枠) 国分優作
9番枠からのスタート、ヤネは同馬に乗って連勝していた国分優作。ゲートは普通に出たが、二完歩目で躓いてしまう。気が抜ける感じになり、また、もともとスッとトモが入るタイプでもなくてポツンと離れた最後方まで下がることになった。

道中は優作が軽くうながして気持ちを切らさないようにしていた。優作はずいぶんと落ち着いていたが、馬が後半に伸びることを信じていたのだろう。3コーナーを過ぎても無理には動かず、4コーナーに差しかかって大外を仕掛けていった。

ティーハーフはしっかりと反応し、小回りのコーナーでスピード上げてマクるように進出する。直線に向くと優作が追いを強め、さらに加速にして一気に先団に迫った。

残り150mで先頭に並び、突き放して勝負あり。最後はさすがにあまり余力はない感じだったが、後続に2馬身半の差をつけてゴール板に飛び込んだ。勝ち時計は1分08秒3(良)で、自身の上がりは34秒0だった。

勝ち時計は当日の500万下と同じ数である。ただ、重賞のこちらがペースが速くてタフな競馬だったので、単純比較はできない。

1000万下と準オープンを強い競馬で勝ち、同様に強い競馬で重賞を獲ってしまった。レースが終わって優作は「まるで子供を相手にしているようだった」と話している。

兄に香港の名馬ラッキーナイン(香港スプリント)、全兄にサドンストーム(京阪杯2着など)がいる良血馬。5歳になって完全に本物になり、今後がますます楽しみだ。このあとはひと息入れ、次走は札幌のキーンランドC(8月30日)を予定している。

◆2着 アースソニック(14番人気・16番枠) 丸田恭介
大外16番枠からのスタート、ヤネは初騎乗だった丸田恭介。ゲートの出は良く、丸田がテンから抑えて下げにかかる。レースが流れたことで後方3番手にまで下がり、内に寄せて中途半端に外を回されることはなかった。

道中は折り合い重視で慎重に。コーナーに入り、4コーナーでティーハーフが抜いていっても我慢させていた。直線の立ち上がりで最外を回して追いに入った。

ティーハーフより外に出てロスは大きかったが、十分に脚が溜まっていたのでグッと伸びる。先行勢はスタミナをなくして止まり、最後で内から伸びていたレンイングランドを交わして2着に上がった。

14番人気と評価は低かったが、京阪杯を勝つなど重賞で多くの好走歴を持つ実力馬。気持ちが強すぎて1200mだと折り合いが難しいが、今回はレースが流れたことで切れ味を活かすことができた。6歳になったが、まだまだやれる。

◆3着 レンイングランド(12番人気・13番枠) 菱田裕二
13番枠からのスタート、ヤネはテン乗りで菱田裕二。ゲートの出は五分で、菱田が押して先行しようとする。が、機敏なスピード馬というわけではなく、周りが速くて前に行けない。菱田も早めにあきらめ、ズルズルと下がって後方4番手の追走になった。

周りを囲まれる形になったが、タイトという感じはなかった。コーナーの走りは楽で、外めを攻めていく。直線で前が開くとジリジリとでも渋太く伸び、2番手に上がるシーンをつくった。最後でアースソニックに差されたが、これとハナ差の3着で入線した。

3歳で52キロで走れた利はあったが、古馬と初対戦で重賞で馬券に絡んだのだから立派である。スパッと切れる脚はないものの、粘り強く応戦するタイプ。多くの調教師はこんな馬に先行する競馬をさせようとするのだが、これは大きな間違いで、抑え気味に乗ってあげた方がいい。

◆14着 コパノリチャード(1番人気・7番枠) 武豊
7番枠からのスタート、ヤネは4戦連続の騎乗となった武豊。ゲートの出は五分で、ユタカが押してポジションを取りにいく。ただ、テンが速くなってスッとは行けず、少し遅れて好位の外に上がった。

道中の感触は悪くなかったが、58キロを背負い、ハイペースの中で4頭分の外を走っては厳しい。4コーナーでユタカが追っていった時には頭が上がって反応がなく、直線は少し頑張った程度で馬群に沈んだ。最終的に14着に終わった。

GIを使ったあとでひと息入っているという、凡走するケースがある臨戦過程。栗東でも函館でも動きは悪くなかったが、陣営は「函館に来てから少し落ち着きすぎている」と話していた。気性の悪いところを出した感じもあったし、力はあっても信頼できないところがある。