府中の芝1600mで争われた春の最強マイラー決定戦。芝は連続開催の7週目で、Cコース使用2週目だった。ダートは雨が残っていたが、芝は良馬場。少し渋っていたかもしれないが、大きな影響はなかったと思われる。
レースを引っ張ったのはリアルインパクト。軽快に速めのラップを刻み、3ハロンを34秒3、1000mを57秒3で通過した。直線は3番手にいた4歳のモーリスが早めに抜け出し、最後でヴァンセンヌが強襲するという展開になった。勝ったのはモーリスで、1番人気の期待に見事応えた。勝ち時計は1分32秒0で、レースの上がりは11秒2-11秒3-12秒2の34秒5だった。
◆1着 モーリス(1番人気・6番枠) 川田将雅
6番枠、ヤネは戸崎圭太から乗り替わって川田将雅。川田は3歳の500万下勝利時に跨っていた。ゲートの中でうるさくしていて、後ろ脚を踏ん張ってもいた。それでスタートが切られてボコッと出る。しかし、すぐにトモが入って行き脚がつき、馬の間をスーッと上がっていった。5番手までポジションアップし、川田が手綱を抑えた。
気持ちが乗って行きっぷりが良すぎる状態ではあり、川田がずっと落ち着かせようとしていた。ただ、手綱を引っ張り切るわけではなく、遊ばせているところがあった。確認をとったわけではないが、ミルコ・デムーロの抑え方を参考にしているのかもしれない。
中盤も気合を表に出して走っていて、3コーナーを過ぎて3番手の外に上がる。直線に向いてからは、左前にいたケイアイエレガントを目標にし、じっくりと追い出しを待った。無理なく自然と並び、残り300mに来てようやく川田が追いに入った。
モーリスは手応え通りにしっかりとギアを上げてグッと抜け出す。200mで後続との差は2馬身ほど。一頭になってからも気を抜くことなく脚を使っていた。最後はさすがに少し鈍ってヴァンセンヌに迫られたが、クビだけ押さえて勝利をつかみ取った。
勝ち時計は前出の通り1分32秒0(良)。自身の上がりは34秒5だった。見た目よりは息が入っていたのだろうが、気持ちが入りながら正攻法の競馬になって府中のマイルGIを乗り切ったのだから素晴らしい強さである。
当日は圧勝した2ヵ月前のダービー卿チャレンジTから2キロ増えて510キロ。堀宣行流の調整で大きめを入念に乗られて仕上げられてきて、以前にあった緩さが抜け、ボリューム感があり、筋肉もついて目立つ体つきだった。万全と思える状態に持ってきていた。
母系は重厚なメジロのラインで、祖母のメジロモントレーはアルゼンチン共和国杯など2000m以上の距離で重賞を4勝している。父は08年にジャパンカップを制したスクリーンヒーロー。同産駒には長距離馬もいるが、意外とマイラーが多い。
血統だけ見れば2000mぐらいまでは問題なくこなす。スタミナを潜在させているのは間違いなくて、ただ、馬体と気性を考えると、距離が延びるのはプラスとは思えない。堀師は「距離を延ばしていきたい」と考えているようだ。まだ4歳、肉体面にも精神面にも成長する余地が残っていて、もっと強くなっていくだろう。
◆2着 ヴァンセンヌ(3番人気・13番枠) 福永祐一
13番枠からのスタート、ヤネは主戦の福永祐一。ゲートの出は五分で、出していかずに自然と下がり、同時に内へと動かしていった。道中のポジションは中位の後ろで馬群の中。タイトな状態ではなく、中盤は内が開いていた。
京王杯スプリングC(2着)で抑える競馬をさせたことが活き、課題の折り合いはスムーズだった。コーナーで無理なく少し前との差が詰まり、直線で捌きにかかった。
前が少し密集していて、内めを狙うがスペースができない。次に外に動かしたが、やはり前が詰まりそう。残り200mの前で少し引きながらクラレントの外に出し、ビシッと追われるまでにロスできてしまった。伸ばせてからはグッと脚を使い、最後でモーリスに迫る。が、クビだけ届かず2着に終わった。
詰まったことで脚が溜まる結果になったところがあるとは思うが、少しスムーズに捌けていれば1着になっていた可能性が高い。6歳になって本格化したフラワーパーク(高松宮記念、スプリンターズS)の仔。全体の時計が速い競馬にも難なく対応したし、今後がますます楽しみだ。
◆3着 クラレント(12番人気・12番枠) 田辺裕信
12番枠からのスタート、ヤネは同馬に乗って重賞を2勝している田辺裕信。ゲートの出は上々で、軽くうながす感じで流れに乗せ、次に自然に任せてポジションが下がる。中位の少し前の外の追走になった。
道中はタメが利いて感触の良い追走ぶりだった。コーナーもスムーズで、直線の立ち上がりは田辺らしく外を攻める。ただ、大きなロスがあったわけではなかった。
直線はモーリスを左前に見る形になり、モーリスより先に仕掛けた。が、追われて少し頭が高くなり、シュッとは加速しない。モーリスに離され、200mを過ぎるとヴァンセンヌに鋭く交わされた。それでも大きくバテずに渋太く脚を使い、3着を守ってゴールした。
6歳の重賞6勝馬。左回りを得意にしていて、府中の芝1600mでは3歳時にNHKマイルCを3着している。昨年の秋以降は右回りで枠順も悪くて結果を出せなかったが、適条件で変わり身を見せた。粘り強い走りは健在である。
◆4着 フィエロ(2番人気・10番枠) 戸崎圭太
10番枠からのスタート、ヤネはマイラーズC(3着)に続いて2度目の騎乗となった戸崎圭太。ゲートの出は良く、行き脚もついて戸崎が抑えながら流れに乗る。中位の少し前の馬群の中の追走になり、外にクラレントがいた。前半は気持ちが乗っていて、中盤で落ち着いて走るようになった。
直線はモーリスの後ろに入ってスペースを探したが、うまく前が開かない。外にいたクラレントの田辺も走路を開ける気はないだろう。ゴチャついた分があったか頭を上げるシーンがあり、手前を替えずに内にモタれてしまう。それでも何とか脚を使ったが、弾けることなく前の3頭から少し離されて4着に終わった。
中間の攻めで絶好の動きを見せていたし、デキは良かったはず。直線で手前を替えなかった原因は特定できないが、やはり少しゴチャついた分ではないか。左回りがダメということはない。次走であらためて期待したいところだ。