府中の芝2400mで争われたクラシックの第二弾。芝は連続6週間開催の最終週で(次開催も引き続き府中)、前の週までのBコースからCコース使用に替わっていた。週中はずっと“雨が降る”という予報だったのだが、フタを開けてみれば快晴。キレイな馬場の中、レースはダービーレコードで決着した。
スピリッツミノルが逃げると見られていたが、出脚の速い馬ではなくてダッシュがつかず、代わって横山典弘のミュゼエイリアンがハナを奪うことになった。後続もついてきて、3ハロン通過は35秒4、1000mは58秒8。淀みのないペースで流れ、底力が要求されるGIらしい競馬になった。
直線は内にモタれながら伸びた皐月賞ドゥラメンテが早めに先頭に立ち、そのまま力強く押し切るという結末になった。見事な二冠達成で、勝ち時計は2分23秒2だった。2着にはサトノラーゼン、3着にはサトノクラウンが入り、そのあとは4着が皐月賞2着のリアルスティールだった。
◆1着 ドゥラメンテ(1番人気・14番枠) M・デムーロ
外の14番枠からのスタート、ヤネは皐月賞勝ちに続いて2度目の騎乗となったミルコ・。デムーロ。ゲートの出は上々で、ミルコは少し手を動かして行き脚をつける。これで気持ちが乗り、スーッと前に出ていった。
ミルコはドゥラメンテの闘争心を尊重し、遊ばせる部分を持たせながら手綱を抑えていた。うまく制御することに成功した。日本のジョッキーだったら、引っ張って立ち上がり、ケンカすることになっていたかもしれない。このあたりは、さすがという他ない。
レースが流れたことで、タテに長くてバラけ気味の競馬になっていた。そんな中で、ポジションは中位の少し前。外ではあったが、2頭分だけで、少し前にコスモナインボールを置いていた。道中は人馬のコンタクトが取れていて、後半に向けて体力を温存することができた。
3コーナーからも動かず脚をタメ、4コーナーで外を回していく。直線の立ち上がりで少し外に膨れ、直線に入ると内にモタれた。ただ、こうなるのは最初からわかっていたこと。ミルコが態勢を戻しながら追い、ドゥラメンテは一気に伸びて先頭に迫った。
残り300mで早くも抜け出し、ここで左手前に戻す。一頭になってからも内にモタれていたが、ミルコに左ムチを入れられながら脚を使った。最後はさすがに前が出なくなっていたが、完全にバテたというわけでなく、危なげなく1着でゴール板を駆け抜けた。
着差は1馬身3/4。勝ち時計はダービーレコードとなる2分23秒2で、自身の上がりは33秒9だった。レースの上がり3ハロンは【11秒9-11秒0-11秒7】の34秒6となっている。
当日の馬体は皐月賞から2キロ減って484キロ。まだ体がしっかりしておらず、中間は在厩して体が減ったり戻ったりで調整は難しかったようだ。それでも堀宣行師が独特の攻めのメニューで仕上げ、力を出せる状態に持ってきていた。まだ骨格に見合ったボリュームがない感じだが、筋肉の付き方は良かった。
秋に菊花賞(10月25日)で三冠を目指すのか、それとも登録している凱旋門賞(10月4日)に使うのか、現時点では未定である。結果的に三冠馬になれたとしても、将来的なことを考えると3000mを走らせることにあまり意味は感じない。また、体の完成度と気性の成熟度からして、フランスに遠征してタフなロンシャンの2400mを走るのは大きなリスクになる。
どちらにせよ、“二冠馬”、“ダービー馬”となったことで、スターホースとして歩んでいくことが宿命づけられた。祖母がエアグルーヴ、母がアドマイヤグルーヴ、父がキングカメハメハという日本競馬ファンにとって思いの強い血統。無事に競走生活を進めていくことを願いたい。
◆2着 サトノラーゼン(5番人気・1番枠) 岩田康誠
最内1番枠、ヤネはテン乗りで岩田康誠。ゲートが開いてポンと好スタートを切り、岩田が抑えにかかる。中位の前のインの追走になり、右前にドゥラメンテがいた。ドゥラメンテと同様に少し気持ちが乗っているのをなだめられていて、完ぺきではないまでも体力を残しつつ追走できていた。
コーナーもじっくりと構え、4コーナーで少し外に動かす。直線に向いて強引に外に出し、接触するようにドゥラメンテの内に併せた。追い比べでグッと離されてしまったが、粘り強く脚を使って最後までバタッとくることはなく、サトノクラウンの追撃を抑えて2着で入線した。
1月5日に初勝利を挙げ、今回が今年6走目。4月18日に500万下を勝ち、中2週で京都新聞杯を勝ち、さらに中2週でダービーという大舞台を迎えていた。トモに力がついてパワーアップしているのは明らかだったが、このローテーションで結果を出したのは立派である。まだまだ強くなっていきそうだ。
◆3着 サトノクラウン(3番人気・11番枠) ルメール
11番枠からのスタート、ヤネは皐月賞(6着)に続いて2度目の騎乗となったルメール。ゲート内で少しイヤがるところがあり、右にヨレて出てしまう。トモはすぐに入った感じで、ルメールが抑えてタメる形をとった。
先頭からは大きく離れ、後方4番手というポジション。ルメールが慎重に抑えて出すところがなかったため、息を入れてリラックスして走れていた。3コーナーを過ぎ、4コーナーに来ても動かない。直線入り口にさしかかり、斜め外に行く感じで大外に出した。
勢いをつけながらではあったが、外に動いたことでロスがあった。それでも直線に向いてクラウンはグッと脚を使う。広いところを追われてフワッとした部分があったか、少し頭が高くなり、尻尾を振るところもあった。それでも渋太く伸び、サトノラーゼンにハナまで迫って3着でゴールした。上がりはメンバー中で最速の33秒8だった。
ドゥラメンテと同じ堀宣行厩舎の所属馬。大きめを入念に乗られるという調整で、ドゥラメンテと併せたこともあった。こちらも体ができ切っていないところがあるが、現時点では十分な状態だったと思う。
マイルがベストで、2000mでも長いかなというぐらいの血統。体型も長距離馬という感じはない。なのでルメールもじっくりと乗ったわけで、その分で最後まで脚を使えた。
皐月賞で外を回して弾かれる結果になったため、今回は少し内を捌いていくかと思っていた。クラウン自身は馬の間を割ったことがある。が、実際は“大外しか考えていない”という誘導だった。ルメールの考えか、調教師の考えか、それとも馬主の意向なのかわからないが、Cコースに替わっていたわけだし、違う攻め方があったのではと感じる。
◆4着 リアルスティール(2番人気・13番枠) 福永祐一
外の13番枠からのスタート、ヤネは主戦の福永祐一。ゲートの出は上々で、すぐに気持ちが入りすぎる状態になって頭を振るシーンがあった。福永は抑えて息を入れようとしたが、なかなかハミが抜けない。1コーナーではかなり頭を振っていた。
タテ位置は中位の後ろになり、外の追走で前に壁ができなかった。掛かっていたというほどではないが、ずっと軽くハミを噛んでいる。それで外を回っているのだから、競馬としては厳しいものだった。
3コーナーを過ぎ、さすがに福永も外には行かずに、なるべく内を回そうとする。馬群の中に入る形になり、直線でドゥラメントの後ろに入って追い出しを開始した。
ドゥラメンテには一気に離されたが、そこから舌を出しながらでも頑張って伸びる。ただ、弾けるまではいかず、3着のサトノクラウンから2馬身離れた4着に終わった。
皐月賞で2着したあと、攻めで素晴らしい動きを見せ、テンションが高くなっている感じもなかった。でも、実際は危ないところがあったのかもしれない。レースが終わって矢作芳人師は「課題としていた1コーナーでハミ受けが悪くなった」と話している。
この点に関しては、皐月賞で出していく競馬をしたことが影響しているのかもしれない。また、母系はマイル~2000m向きで、こちらの血が出てきた可能性がある。馬体はしっかりしていて、さらなる成長に期待したいところだ。