府中の芝1400mで争われた安田記念につながるG2競走。芝は開催4週目になり、前の週までのAコースからBコース使用に替わっていた。朝に雨が降り、良発表でも少し渋った馬場状態だった。
1400mの重賞にしては先行馬が少ないメンバーで、牝馬のダンスアミーガが押し出されてハナに立つ形になった。みなが抑えてレースはゆったりと流れ、3ハロン通過は36秒0という遅さだった。
4ハロン目は11秒9で、上がりの3ハロンは11秒3-10秒8-11秒6の33秒7と速い数字になった。そんな競馬の中、勝利をものにしたのは7歳のサクラゴスペルだった。好位の後ろの外で脚をタメ、直線で渋太く伸びて勝ち切った。
◆1着 サクラゴスペル(5番人気・11番枠) 戸崎圭太
11番枠、ヤネは3月にオーシャンSを勝った時に跨っていた戸崎圭太。ゲートが開いてポンと好スタートを切り、戸崎は出していかずに抑えにかかる。好位の後ろの外につける形になり、ガッチリと抑えつつ追走になった。
といってもスローの分で引っ張っていたという感じで、ゴスペル自身はヒドく力んで走っているわけではなかった。コーナーも慎重にタメ、十分に体力を残して直線に向かうことができた。
戸崎はすぐには仕掛けず、時に軽く気合をつける程度で余裕を見せていた。そして、残り250mの少し前あたりに来て、しごいて本気の追いに入った。
ゴスペルはシャドーロール着用馬で頭の高いところがあり、シュッと切れる感じでは加速しない。それでもしっかりと脚を使い、内の各馬を交わしていく。渋太く抜け出し、最後は外から伸びてきたヴァンセンヌの追撃を抑えて先頭でゴール板に飛び込んだ。
着差はアタマ。勝ち時計はスローの分で1分21秒6(良)と重賞にしては遅い数字になり、自身の上がりは33秒3だった。ラストの1ハロンは、おそらく11秒3だろう。
先行馬が少なかったので、行きたがるところがあるゴスペルが抑えながらでも2番手とかハナに行ってしまうではと考えていた。が、戸崎は最初から抑えにかかった。この点に関して、管理する尾関知人師は「Bコースになったのに内が残っていないので、脚をタメていこうとジョッキーと話した」と、レース後にコメントしている。
次は中2週で安田記念(6月7日)。確かにマイルは少し長いが、ロードカナロアが勝った13年の安田記念で5着(走破時計1分31秒9)していて、こなせないことはない。オーシャンSにしても今回にして抑えを利かせて終いにしっかりと伸びていて、同様の競馬で見せ場をつくってくることも可能だろう。
◆2着 ヴァンセンヌ(2番人気・15番枠) 福永祐一
外の15番枠からのスタート、ヤネは前のレースまでの3連勝ですべて手綱を取っていた福永祐一。ゲートの出は五分だったが、福永はすぐに抑えにかかる。ジワジワと下がり、バラけてくると内に寄せていった。
結果的に上位にきたからいいが、ペースを考えると下げすぎではあったと思う。でも、中途半端な位置で止めたら外を回されることになっていたし、どれが正解だったかはわからない。
コーナーもジッと構え、直線に向いて外に動かしてスペースを探す。残り400mでうまく開いたところに入り、走路ができて追われると、しっかり反応しギアを上げた。
速い上がりの中でグイグイと差を詰め、ゴスペルを交わすかというシーンをつくる。が、最後は並ばれた分でかゴスペルが頑張り、アタマ差の2着に終わった。
ヴァンセンヌが使った上がりは32秒7という素晴らしい数字だった。これまで力をの要る馬場で結果を出してきたので瞬発力を要求された時にどうかというところがあったが、良でも切れることを証明した。そもそも、母が高松宮記念とスプリンターズSを勝ったフラワーパークという血統(父はディープインパクト)。切れる脚を繰り出して何の不思議もなかった。
今回は2月の東京新聞杯(1着)以来で3ヵ月ぶりの実戦だった。見た目に悪くはなかったが、「少し筋肉がつき切っていないかな」というところがあったので、もっと良くなってくる可能性がある。次はもちろん安田記念。実績を残してきたマイルの距離でGI制覇を狙う。
◆3着 オメガヴェンデッタ(7番人気・8番枠) 横山典弘
8番枠からのスタート、ヤネはテン乗りで横山典弘。ゲートが開いてダッシュは平凡だったが、ノリがうながし、すぐにトモが入ってスーッと前にいった。ダンスアミーガを前に見る形で2番手の追走になった。
行きたがるところがある気性だが、ノリが慎重に手綱を抑え、息を入れてあげることに成功した。下手に流れると闘争心に火がついてしまうので、遅いぐらいでよかったのかもしれない。
コーナーも抑えたまま脚をタメ、直線に向いて早めに追い出しに入る。少し頭が高くなり、舌も出して気の悪いところを見せたいたが、3頭の真ん中で渋太く脚を使った。最後は苦しくなって外から2頭に交わされたが、何とか3着に残ってゴールした。
母はマイルチャンピオンシップで4着するなど、短距離~マイルで活躍したビハインドザマスク。去勢しても気の悪いところが残っているし、体にも緩さがある。それでも4歳の段階で重賞で好走するまでになった。今後がますます楽しみだ。
◆10着 ダイワマッジョーレ(1番人気・13番枠) M・デムーロ
13番枠からのスタート、ヤネは3戦連続の騎乗となったミルコ・デムーロ。ゲート内で堅くなっていて、ヨレる感じでうまく出られずに後手に回る。ミルコは無理には行かせず、ヴァンセンヌの少し前で馬群の中を進む格好になった。
道中はそうタイトでなく、スローでも息が入って感触の良い追走ぶりだった。コーナーもじっくりとタメ、ミルコは内の走路を選択する。結果的に直線で前が詰まることになるのだが、流れが遅かったことを考えると適切な誘導だったと思う。直線の立ち上がりではコーナリングの利で前との差が詰まっていた。
直線でスペースができるのを待ったが、前が密集して走路がひらけない。マッジョーレ自身も前を気にしたかハミを取らずにフワフワと走っていた。ミルコは外に動かし、しばらく待ってから追うことになる。すでに手遅れになっていて、脚を使いはしたものの10着に終わった。0秒3差までは詰めていた。
今回は高松宮記念(6着)以来の実戦になり、目標は先(安田記念)という状況。体が細めで筋肉がつき切っていない感じで、陣営も追い足りないことを認めていた。これを使って良化してくるだろう。