中山の芝2000mで争われた牡馬クラシックの第一弾。連続8週間開催の最終週になり、Bコース使用3週目だった。JRAはGIの週に合わせる形で芝を速く設定していて、時計が出やすいし、内も伸びる状態になっていた。当日は午後から小雨が降ったが、影響はなかったと思われる。
ゲートが開いて逃げると目されていたスプリッツミノルはスピードに乗れず、キタサンブラックがスッと出ていった。これを外からクラリティスカイが追いかけ、1コーナー前で交わして先頭に立つ。2ハロン目は10秒7と速いラップになった。
クラリティは気持ちの乗った逃げを見せ、3ハロン目から12秒前後のラップを刻んでいった。3ハロンの通過は35秒2で、1000mは59秒2。これは馬場を考えるとハイペース寄りの平均ペースといったところだろう。
直線はまずリアルスティールが抜け出し、遅れてドゥラメンテが猛然と伸びて突き抜けるという結末になった。レースの上がりは11秒7-11秒4-11秒6の34秒7。ドゥラメンテ自身の上がりは34秒を割って33秒9になり、走破時計は1分58秒2だった。なお、詳しくは後述するが、ドゥラメンテに騎乗したミルコ・デムーロは、4コーナーで外側に斜行した事象で騎乗停止処分を受けている。
◆1着 ドゥラメンテ(3番人気・2番枠) M・デムーロ
内の2番枠からのスタート、ミルコはテン乗りだった。ゲートが開いて左にヨレ、外のスピリッツミノルと接触する。ミルコはそのまま抑え、後方3番手のインを進む形になった。気性が若くてスイッチが入りやすいところがあり、そのあたりを考えて慎重に誘導していた。
その甲斐あって、道中は気持ちの強さをうかがわせながらも息を入れて走ることができた。向正面をスムーズに越し、3コーナーを過ぎて外に動いて少し上がる。無理をしたわけではなく、ミルコは手綱を抱えていた。
そして、問題の4コーナーがやってくる。前が少しゴチャついていたのでミルコが外に誘導しようとしたが、ドゥラメンテが過剰に反応して大きく外に切れてしまった。かなり派手な斜行で、数頭の邪魔をし、ミルコは開催日4日間の騎乗停止処分を受けることになった。
直線に向いて早めに態勢が前に戻り、外ムチを入れるとすぐに加速する。残り200mで先頭との差は3馬身以上あったが、気持ち良くグングンと伸びて猛然と差を詰め、リアルスティールを並ぶ間もなく交わして先頭でゴール板を駆け抜けた。着差は1馬身半。1分58秒2の時計はコースレコードと0秒4差で、ロゴタイプがつくった皐月賞レコードとは0秒2差だった。
2月に共同通信杯を2着したあとで放牧に出し、美浦に戻ってから堀宣行厩舎流の調整で大きいところを乗ってきた。少し追い足りないという話もあったが、当日は前走比2キロ減の486キロですっきりと見せていた。ただ、まだ筋肉が付き切っていなくて頼りない感じがあり、もっと良くなる余地がある。
父はキングカメハメハで、母はエリザベス女王杯を連覇したアドマイヤグルーヴ。血統面からはダービーディスタンスにも対応できてよく、問題はやはり気性になる。ダービーは中5週で5月31日。今回の競馬とにかく強烈だったので、二冠を奪取する可能性は低くないだろう。体と気性がいい方に成長すれば、歴史に名を残すような名馬になれる。
◆2着 リアルスティール(2番人気・5番枠) 福永祐一
5番枠からのスタート、ヤネは主戦の福永祐一。ゲートの出は五分で、気持ちが乗ってスッと出ていく。福永が抑えて下げ、好位でそうタイトでない馬群の中を進む形になった。少し気負ってなだめられつつの追走だったが、息が入っていないことはなかった。
3コーナーを過ぎても我慢させ、4コーナーでちょうど開いてくれた外に出す。直線に向いて早めに福永がしごき、しっかりと脚を使って残り200mを前にして先頭に立った。そこから離しにかかったが、ドゥラメンテが一気に伸びてきてあっさり交わされてしまう。それでも最後まで大きく脚色を乱すことはなく、3着に2馬身半の差をつけて2着で入線した。
前哨戦のスプリングSは、仕上げもレースでの乗り方も完全に“トライアル仕様”だった。中間は栗東のCWと坂路で意欲的に乗り込み、好時計を連発してデキを上げていた。当日は緩みの取れた体で絶好の気配だった。
母系と体型から2400mは長い感じがあるが、全兄のラングレーは2400mで2勝している。抜いて走るところがあるし、こなせないことはないだろう。ドゥラメンテと同様にダービーで注目される。
◆3着 キタサンブラック(4番人気・7番枠) 浜中俊
7番枠からのスタート、ヤネはテン乗りで浜中俊。ゲートの出は上々で、少し行くとスッと出て先頭に立つ。外からクラリティが交わし、2番手を進む形になった。道中は適度な闘争心を見せて感触の良い追走ぶりだった。
後半のコーナーもスムーズで、4コーナーに来ても手応えは十分。直線で追われてからはスパッと切れる脚を使えず、スティールに早めに交わされた。それでも頑張って食い下がっていたが、徐々に鈍って離れた3着に終わった。
アクションが大きく、緩いところがあるのか少し頭が高くてシュとは伸びない。それでも正攻法の競馬でGIを3着するのだから非凡な素質を備えているのは確かだ。今後の成長が楽しみ。
◆6着 サトノクラウン(1番人気・8番枠) ルメール
8番枠からのスタート、ヤネはテン乗りでルメール。ゲート内で少し集中力を欠いていて、軽くアオッて出て後手に回る。ルメールはそのまま抑え、後方4番手を進む形になった。道中は適度にリラックスしてスタミナを残すことができていた。
3コーナーを過ぎても動かずにタメていて、4コーナーで外を動かしにかかる。ここでかなり外を回る形になり、さらに内が張り出してきて弾かれてしまった。当然のこと前との差は大きく開き、「もう終わったな」という感じだった。
直線に向いたところでは内からドゥラメンテに寄られる。このロスは軽度だった。前を向いて走り出してからはしっかりと脚を使ったが、ドゥラメンテには離されてしまう。残り200mを過ぎて坂では頭が上がって推進力が出ず、ジリジリと詰めたものの6着に終わった。
弾かれることになったから言うわけでなく、4コーナーで大外を動かしたルメールの判断は間違っていたと思う。当日の芝の状態、時計を考えると、外を回したらその時点でほぼアウト。よほど力が抜けていない限り、内をうまく捌いてきた何かにやられることになる。
次はダービー。血統と体型からは2000mまでという感じなのだが、今回は弥生賞(1着)と今回と息を入れて走れていたし、対応できないことはないだろう。巻き返しに期待したいところだ。