レース回顧 中山グランドJ

4250mという長丁場、2つの大きな障害(大竹柵、大いけ垣)、谷の深いバンケット…。タフな中山の大障害コースで争われた障害界の最高峰レースは、15頭立てで争われ、5頭が落馬して完走を果たせなかった。

勝ったのは大障害コースは初挑戦だった西の5歳馬アップトゥデイト。2番手追走から最終周回の向正面で先頭に立ち、直線で突き放して大差の圧勝劇を演じた。4分46秒6の勝ち時計は堂々のレコード。騎乗した林満明はデビュー30年目のJ・GI初制覇だった。

◆1着 アップトゥデイト(4番人気・12番枠) 林満明
12番枠からのスタート、ヤネは主戦の林満明。ゲートの出は上々で、林が押して流れに乗せていく。序盤は3番手で、1分走ったところで2番手に上がった。変わらなかったのは、アポロマーベリックから3馬身ほど後ろを進んでいたこと。明らかにマーベリックを“目標”に使った騎乗だった。

難関の大竹柵と大いけ垣は大きな飛越でしっかりとクリアした。そして、3分を過ぎると意識してマーベリックに並んでプレッシャーをかけていく。向正面で前に出て、4コーナーで押して離しにかかった。マーベリックは脚がなくなり、この時点ですでに楽勝しそうなムードだった。

直線の置き障害を普通に飛び、しっかりとした走りで後ろをさらに離していく。余力が残っている感じでゴール板を駆け抜け、終わってみれば2着との差は1秒7にもなっていた。

4分46秒6(良)の時計は04年にブランディスがつくったレコードを0秒4更新するもの。平均ハロンタイムは13秒49で、自身の上がりは38秒1、ラスト1ハロンが12秒6だった。過酷な舞台を走ってきて、後半の速さは特筆ものである。

前2走では後半の3コーナー過ぎからモタつくようなところを見せていたのだが、今回は積極的に乗られてあまり気を抜かずに走ることができた。重賞初勝利がJ・GIとなり、今後は放牧に出して充電される予定。次の目標は中山大障害(12月26日)になる。

◆2着 ソンブレロ(5番人気・13番枠) 高田潤
13番枠からのスタート、ヤネは主戦の高田潤。ゲートの出は五分で、無理に出さずに自然と下がる。離れた中位のインに追走になり、適度にリラックスして感触の良い追走ぶりだった。

大竹柵は無難にクリア。大いけ垣を飛んで前にいたテンジンキヨモリが落馬してこれを避ける形になったが、大きなロスにはならなかった。最終周回に入ってもタメたままで動かず、3コーナーを過ぎて徐々に詰めていく。直線の立ち上がりで外に出し、2番手にいたサンレイデュークとの差は2馬身ほどになっていた。

置き障害を飛んでからはサンレイとの叩き合いにいなった。タメて乗られた分で体力が残っていて、サンレイをしっかりと交わして2着でゴールした。上がりはメンバー中で最速となる37秒9だった。

中山は初、しかも大障害コースでいきなり結果を出すのだから立派だ。アップと同じ5歳馬。かなりのスタミナを備えていて、まだまだ成長しそうな雰囲気がある。

◆3着 サンレイデューク(3番人気・7番枠) 難波剛健
7番枠からのスタート、ヤネは主戦の難波剛健。ゲートの出は上々で、ソンブレロと同じように抑えて下げていく。バラけた中位の後ろで、ソンブレロから4馬身ほど離れたところを進んでいた。折り合ってスムーズな追走ぶりだった。

大竹柵と大いけ垣は問題なくクリアした。後半でソンブレロと違ったのは、向正面で早めに動きだしたことである。直線で2番手に上がったものの、最後は先に仕掛けた分でソンブレロに交わされて3着に終わった。ただ、4着のシャイニーブラックには10馬身の差をつけている。

暮れに中山大障害を3着に駆け、今回は強気に動かしていって3着に好走。7歳を迎えたが、確実に地力を底上げしている。今後も活躍を続けてくれそうだ。

◆5着 アポロマーベリック(2番人気・5番枠) 五十嵐雄祐
5番枠からのスタート、ヤネは主戦の五十嵐雄祐。ゲートが開いてダッシュがつき、最初のコーナーで先頭に出る。ショウナンカミングで出られるシーンがあったが、4ハロンほど行ったところからは単騎で運ぶことができた。

大竹柵と大いけ垣はしっかりと飛んだが、後半で早めにアップが競ってくる。向正面で交わされてから離れないように手を押していったが、相手の手応えが優勢。4コーナーでスタミナは切れていて、大きく離れた5着に終わった。

昨年は5馬身差で当レースを勝ち、今年は5着。五十嵐はレースが終わって「去年のいい頃の感じに戻っていない」と話したが、万全だっとしてもアップにはかなわなかっただろう。悪い走りだったわけではなく、次走であらためて期待したい。

◆7着 レッドキングダム(1番人気・4番枠) 西谷誠
4番枠からのスタート、ヤネは主戦の西谷誠。ゲートの出はひと息で、抑えながらジワッと上がっていく。離れた5番手の追走になり、いつもほど行きたがらずにスムーズに走れていた。

中盤を過ぎて大いけ垣に差しかかり、ここで右に飛んでバランスを崩してしまう。そのあとはずっと右にモタれていた。どの地点かはハッキリしないが、左前肢を痛めたとのことである。

西谷は無理せず止めようとも考えたようだが、一応はレースに参加させた。ただ、最終周回の4コーナーで伸びそうな気配はなく、西谷も追ってはいなかった。直線の置き障害では躓いて落馬しそうになり、7着でゴールすることとなった。

西谷は「脚を痛めてからも障害を飛びにいっていた。勝負根性は大したもの」と話した。その点では褒められるかもしれないが、傷めた程度がどれぐらいなのかは心配されるところである。