阪神の外回り芝1600mで争われた牝馬三冠の第一戦。芝は連続開催の7週目になり、Bコース使用2週目だった。金曜に降った雨は乾いてきて良馬場になったが、水を含んでいる状態ではあった。内めは掘れてボコボコしていた。
レースは意外な展開になった。ハナを奪ったのは岩田康誠のレッツゴードンキ。ドンキ自身が前向きな気性であること、また、他が強く主張しなかったことで岩田が行かせた。
岩田が引っ張って抑えてペースを落とし、テンの3ハロンは12秒7-11秒7-12秒7の37秒1と異常に遅いラップになった。4ハロン目は12秒9とあわや13秒台。5ハロン目は12秒5で、1000m通過は62秒5だった。ちなみに昨年は3ハロンが33秒8で1000mが57秒0。昨年は速すぎた例だが、1000m通過は今年の方が何と5秒5も遅かった。
そんな桜花賞の結末は“ドンキの逃げ切り勝ち”だった。上がりの3ハロンを11秒3-10秒7-11秒5の33秒5で走り切り、終わってみれば後続に4馬身もの差をつけていた。一方で、断然の1番人気に推されたルージュバックは、伸びを欠いて9着に敗れている。
◆1着 レッツゴードンキ(5番人気・6番枠) 岩田康誠
6番枠からのスタート、ヤネは主戦の岩田康誠。ゲートが開いて好スタートを切り、序盤は内をうかがいつつ手綱を抑えていた。ドンキに気持ちが乗り、内がピッチを上げなかったことで岩田が行かせてスーッとハナに立った。
単騎の形が確定して岩田が手綱を引っ張って息を入れようとする。そこ光景は、まるで中距離戦のようだった。あの流れながら何かがマクッてきそうなものだが、後続も魅入られたかのように抑え合ってしまう。結果、歴史に残る超々スローの桜花賞ができあがった。
後半のコーナーは適度にリラックスしてスタミナを温存することができた。直線に向いて岩田は、すぐにはしごかず、時に追いを強くする。それでも後ろはジリジリと離れていった。
ビッシリ追ったの残り200mの前から。ドンキはしっかりと脚を使い、後続に近寄らせない。そのまま最後まで伸び、余力が残っている状態で1着でゴール板を駆け抜けた。着差は4馬身で、勝ち時計は1分36秒0(良)。自身の上がりは前出の通り33秒5だった。
ペースに恵まれたのは確かだが、直線の走り、上がりの速さは非凡な脚力を示すものである。チューリップ賞(3着)を使ったあとは栗東の坂路で鍛え、パワーアップした姿で桜の女王の座を射止めた。
父がキングカメハメハで、母が短距離のダートで5勝したマルトクという血統。母系はあまり目立たない。このあと、NHKマイルC(5月10日)を使うのか、それともオークス(5月24日)に進むのかは未定。気性を考えるとマイル路線がいいだろうが、三冠もかかってくるわけで、慎重に決められることになりそうだ。
◆2着 クルミナル(7番人気・7番枠) 池添謙一
7番枠からのスタート、ヤネは主戦の池添謙一。ゲートが開いてトモが入らずに置かれたが、すぐに行き脚がつき、開いていた内めからジワッと追い上げた。道中は息が入ってリズム良く追走していた。
3コーナーを過ぎると少しずつ外に出していき、直線でさらに外にいって広いところを伸ばす。ギアが上がってから切れる脚を使い、外からしっかりと3着に上がった。自身の上がりは33秒4だった。
ディープインパクト産駒の牝馬としてはめずらしく、490キロ級と体が大きい。その分だけ緩いところはあるが、高い素質を持っているのは確かだ。体の方は徐々にでもしっかりしてくるだろう。
◆3着 コンテッサトゥーレ(8番人気・1番枠) ルメール
最内1番枠からのスタート、ヤネは新馬勝ち以来の騎乗となったルメール。過去3戦はトモが入らないところがあったが、今回はポンと五分に出ることができた。好位のインで前半は行きたがるところがあり、抑えて下げて落ち着いて走るようになった。
コーナーは動かずにタメ、直線は内めを捌きながら伸ばす。最内に入って残り100mで2番手に上がったが、最後は鈍って3着に落ちた。
父はディープインパクトで、母は阪神牝馬Sを勝ったエアトゥーレ。そして、兄に皐月賞を逃げ切ったキャプテントゥーレがいる。まだ体が頼りなく、そんな状態でGIで好走することができたのだから力がある。今後のさらなる成長に期待したい。
◆9着 ルージュバック(1番人気・8番枠) 戸崎圭太
8番枠からのスタート、ヤネは主戦の戸崎圭太。ゲートの出は上々で、戸崎が無理には出さずに自然と下がる。前半は中位馬群で、3コーナーに来ると戸崎がタイトな状態を嫌ったか、引いて下げて後方のポジションになった。
4コーナーからは外めを追っていくが、反応はひと息だった。直線に入ってからも気持ちが乗らない感じでギアが上がらない。最後は脚を使ったものの、見せ場をつくれずに9着に終わった。
2月8日にきさらぎ賞を勝ったあとは放牧に出され、美浦に戻って少し細く見せていた。さらにウッドの最終追いでは途中でスイッチが入ってしまい、時計が予定より3秒も速くなった。
そのあと西への長距離輸送が入ったわけで、当日は前走比6キロ減の444キロという馬体になった。毛ヅヤは良かったし、筋肉が付いてはいたが、やはり腹が巻き上がっていて細い。万全とはいえない状態だった。
肉体面の問題が精神面に影響を与えたか、実戦では前向きに走ろうという意志が感じられなかった。今後の動向は流動的ということになりそう。体を立て直すには時間が必要で、煮詰まっているであろう心のケアも重要になる。しっかりと静養して本来の力を取り戻してもらいたいものだ。