レース回顧 大阪杯

阪神の内回り芝2000mで争われた春のGIにつながるGII競走。芝は連続開催で6週目になり、この週からBコースに替わっていた。芝はさすがに荒れ気味で、さらに当日は雨が降って馬場が悪化。不良馬場にまで進行することになり、正直、興味はそがれた。

レースを引っ張ったのはゼロスで、ムキになって走ってスイスイと飛ばしていく。離れた2番手の好位組は少し固まり、あとはバラけてタテに長い展開になった。3ハロン通過は36秒6で、1000mは61秒1だった。

4コーナーに差しかかってゼロスの脚色が鈍り、カレンブラックヒル以下の2番手勢力が一気に差を詰める。全体にペースが緩まず、この好位組でも競馬は厳しかった。結局は差しが決まることになり、勝ったの5歳の牝馬ラキシスだった。大きな注目を集めたキズナは2着に終わった。

◆1着 ラキシス(4番人気・3番枠) ルメール
3番枠からのスタート、ヤネはテン乗りでルメール。ゲートが開いて前脚を少し上げて出て、ダッシュ自体も速くなかった。ルメールは自然に任せて押すことはせず、中団より後ろで後方4番手を進む形になった。

内を避けて少し外に構えていて、囲まれずにプレッシャーを受けることはなかった。馬場にノメッてはいなかったし、のんびりと走るぐらいで体力を残すことができた。3コーナーから少し押して気持ちを乗せたが、まだスイッチは入れていなかった。

4コーナーに来て少し外に動かし、直線の立ち上がりで前が開いてスムーズに追い出すことができた。外からマクッてきていたキズナが先を越す形になったが、仕掛けたのはラキシスの方があと。残り200mを過ぎて内からグッと先頭に出、最後までしっかりと脚を使って1着でゴール板を駆け抜けた。2馬身差の完勝で、勝ち時計は2分02秒9(不)。上がりは35秒9で、ラスト1ハロンは12秒7か12秒8で駆けている。

今回は有馬記念(6着)以来で3ヵ月ぶりの実戦。最終追い(栗東のCW)では3頭併せで2頭に遅れていたが、角居勝彦流の調整で熱心に乗り込まれていて、角居師も「動ける仕上がり」というコメントを出していた。

当日は10キロ増の468キロ。馬体増でもスッキリと見せていて、もう少しボリュームが出ても良さそうなぐらいの体つきだった。まだ成長余地が残っているということである。

それにしても、久々、不良馬場という条件下でこれだけのパフォーマンスを見せたのはスゴイ。3歳時に重馬場のエリザベス女王杯を2着しているが、今回ほど悪い馬場ではなかった。

さらに驚くのは、ゴールした時に脚取りが確かで余力が残っていたことである。2着のキズナ以下、みなが最後は苦しくなってアップアップだったのに、ラキシスだけが違っていた。

正式決定はしていないが、天皇賞(春)(5月3日)に進むことになる模様。血統面からは3200mでという感じはしないが、折り合いを欠くところはなく、対応できそうな気がする。また、今回は力の要る馬場で結果を出したが、京都で切れることは33秒4の上がりで差し切ったエリザベス女王杯で証明済みだ。5歳の今年は大変な活躍を見せるかもしれない。

◆2着 キズナ(1番人気・7番枠) 武豊
7番枠からのスタート、ヤネは主戦の武豊。ゲートが開いて少し左にヨレたが、ダッシュ自体はついていた。ユタカは抑えて自然と下がり、後方3番手でラキシスから3馬身ほど後ろを進む形になった。前半から中盤は適度な闘争心を見せていた。

3コーナーの前あたりで少し置かれる感じになり、ユタカが手を動かしていた。コーナーに入って徐々に詰めにかかり、4コーナーに来てユタカが強めに押してムチを抜いた。

キズナはすぐにスピードアップし、大外をマクッていく。直線に入ってムチが入り、グッと伸びて残り250mのあたりで早くも先頭に出た。しかし、早く動いた分で少し苦しくなり、内からラシキスに交わされてしまう。地力と根性がある分でバタッとはこなかったが、2馬身差の2着に終わった。

骨折明けだった京都記念は22キロ増でボテッとした体つきだった。その後は栗東のの坂路とCWで意欲的に攻められ、CWの最終追いでは63秒台-11秒台の一番時計で先着していた。当日は京都記念から8キロ減って506キロ。もうひとつ迫力がないようにも見えたが、体は少し良くなっていた。

結果は2着だったが、内容が悪かったわけではない。道悪の中で早めに外を動けば厳しくなるのは当然だし、マクッていけたこと自体が脚力が上であることの証明である。次は予定通り天皇賞(春)。反動が出る可能性はあるので、今後の調整ぶりを注視したい。

◆3着 エアソミュール(6番人気・4番枠) M・デムーロ
4番枠からのスタート、ヤネはテン乗りでミルコ・デムーロ。ゲートの出はまずまずで、掛かる気性を考えてミルコが抑えにかかる。それでもソミュールは気持ちが入ってしまい、好位に上がった。

囲まれて前が壁になっている分で暴走するまではいかなかったが、ずっと完全には息が入っていなかった。後半のコーナーに来ても、まだミルコがなだめていた。

直線に向いて追い出しに入ろうとしたところ、前が密集してスペースがない。そこでロゴタイプの外に回しにかかる。が、出したところで後ろから来たラキシスに締められて少し引いてしまった。

それまで力んで走っていたこともあり、普通ならそこで気持ちが切れて後退している。が、頑張って脚を使って3番手に上がり、苦しくなりながらも3着で入線した。

決して、というかまったくスムーズな競馬でなく、それで馬券に絡むのだから能力は素晴らしいものがある。ラキシスと同じ角居勝彦師の管理馬。攻めでは爆発的な動きを見せていて、抜群にデキが良かったことも好走因の1つである。

6歳になっても折り合い面で成長が見られないが、闘争心があるのは競走馬にとって大事なことではある。角居師にも考えがあるのだろう。でも、どうしても「マイルを使ったもらいたい」と思ってしまう。

◆4着 スピルバーグ(2番人気・12番枠) 北村宏司
12番枠からのスタート、ヤネは主戦の北村宏司。ゲートが開いてトモに力が入り切らず、ダッシュは遅めだった。置かれて最後方の追走になり、道中は頭が上がって行きっぷりもひと息だった。

3コーナー前から早めに北村が押していくが、やはり頭が上がって脚を使えない。直線は外を通ってジリジリと伸びてきたが、内にモタれていてギュンとはこず、最後は脚が上がって4着までだった。

トモの入りが悪い追い込み馬。予想されたことではあったが、やはり道悪は良くなかった。全兄のトーセンラーも道悪は不得手である。次はイギリスのアスコットに飛んでプリンスオブウェールズS(GI・芝2000m)。施行日は6月17日になる。