トリッキーなコース形態の中山芝1600mで争われたGIII競走。ハンデ戦で4.5キロの上下差があった。芝は連続開催の6週目で、この週からBコースに替わっていた。
当日は朝から雨が降っていた。午後になって雨足が弱くなって馬場は良だったが、水を含んだ状態だったのは間違いない。ただ、当日は速い時計と速い上がりが出るレースが多かった。
先導したのは予想通りラインスピリット。3ハロン通過は35秒6と遅めだったが、その分だけ掛かった後続が突いてくることになり、中盤でラップが上がってしまった。
4ハロン目からの3ハロンは、11秒1-11秒3-11秒6の34秒0という速さ。結果、差しがハマる競馬になり、1番人気に推されていた4歳のモーリス(55キロ)が外から突き抜けて戴冠した。
ちなみに、最後の2ハロンは11秒7-10秒9。モーリスが強かった分があるが、マイルの重賞でラストが11秒を割るというのは、ちょっと記憶にない。
◆1着 モーリス(1番人気・10番枠) 戸崎圭太
ハンデは55キロ。10番枠からのスタートで、ヤネは準オープン勝ちの前のレースから手綱を取っている戸崎圭太だった。ゲートが開いてアオッて出て後手に回る。ゲートの出方自体がうまくないことと、緩さがあってトモの入りが遅いことの両方があるだろう。
タテ位置は後方2番手。前半はタイトではない馬群の中で、気持ちが乗っているのを戸崎が慎重に抑えていた。3コーナーを過ぎて外が抜けてからも、戸崎は前に馬を置く形をとって折り合いに専念する。その甲斐あって、しっかりと体力を残すことができた。
4コーナーに来て少し外に動かし、直線に入る前から戸崎が手を動かしていく。ただ、遊びを入れて持続的に本気ではしごいてはいなかった。直線は少し内にモタれていたものの、グッと脚を使って最外から差を詰める。残り200mを過ぎて先頭に立ち、100mからもの凄い切れ味で一気に突き放して勝利を決めた。
後続につけた着差は3馬身半で、勝ち時計はレースレコードとなる1分32秒2(良)。自身の上がりは33秒0になり、ラスト1ハロンはおそらく10秒8で駆けている。相変わらず粗削りな感じではあったが、強烈なインパクトを与える勝利だった。
次走は決まっておらず、春の大目標は安田記念(6月7日)に置くことになった。府中だと少し競馬が難しくなるが、抑えが利けば瞬発力をフルに活かせるコースではある。まだ4歳、さらなる飛躍に期待したい。
◆2着 クラリティシチー(4番人気・9番枠) 三浦皇成
ハンデは56キロ。9番枠からのスタートで、ヤネはテン乗りで三浦皇成だった。ゲートの出は上々で、三浦は抑えて下げにかかる。後方の外めで少し上げ下げがあったが、三浦はずっと抱えて脚を残すことに専念していた。
4コーナーに来て手綱を緩めて外を動かしていき、直線入り口から本気の追いに入る。しっかりと脚を使ったが、外から楽にモーリスがやってきて、抜かれると一気に離されてしまった。それでも渋太く2番手に上がり、最後は鈍りながらも2着に頑張った。
モーリスが目立ってしまったが、クラリティも外を回ってレベルの高い競馬をしている。やはりタメる形ならしっかりと脚を使うし、成長しているのも確かだ。モーリスと同じ4歳世代で、まだ強くなるだろう。
◆3着 インパルスヒーロー(9番人気・4番枠) 田中勝春
ハンデは56キロ。4番枠からのスタートで、ヤネは主戦の田中勝春だった。ゲート内で少しうるさくしていて、何とか五分に出たものの大きく左にヨレてしまう。態勢が整うまで待ったことで中位の少し後ろまで下がり、外めを進む形になった。
道中はリズム重視でしっかりと抑えていた。3コーナーを過ぎるとクラリティが外から被せてきて、勝春は例によって腰が引けて手綱を引いたまま、どうしたらいいのかわからないような状態になってしまう。
4コーナーでは最後方に近いところまで下がっていて、ここで外を回して仕掛けていった。非常にロスの多い競馬になったが、脚が溜まっていたのとインパルス自身に力があることで、直線は外からグイグイ伸びてクラリティとクビ差の3着に上がった。
3歳時にはNHKマイルCで内にモタれながらクビ差の2着に駆けているインパルス。その後は不振におちいっていたが、東風S(3着)に続けての好走になり、ようやく本来の力を発揮できるようになった。
とにかく残念だったのが勝春の騎乗である。勝春は土曜の安房特別(レオニーズ)でも気持ち悪いぐらいインパルスと同じ競馬をしていた。勝負どころで被されて引っ張って下げ、大きく外に回した。直線で伸びたものの、やっぱり3着までだった。
まあ、満足な騎乗ができないのは、今に始まったことではない。狙いたい馬に乗っていると、買うべきなのか押さえに回すぐらいにするのかヒドく悩まされる。
ご存知のように、JRAのジョッキーは競馬学校に入る段階で“素人の寄せ集め”。優勝劣敗も何もなしに基本的に全員がデビューでき、年に2、3勝でも2,000万円ぐらいの収入を得ることができる。このあたりのシステムを変えないことには、世界的に見て低いレベルのままだろう。