レース回顧 スプリングS

中山の芝1800mで争われた皐月賞のトライアル競走。芝Aコース使用4週目になり、内めが少し荒れてはいたのだが、ここを攻めた馬が好走するケースが多く見られた。

典型的な逃げ馬がいないメンバーで、行き脚がついたタケデンタイガーがハナを奪うことになった。少し大きく後ろを離したが、3ハロン通過が36秒7、中盤でさらに緩んで1000mが62秒6と、ペースは遅かった。

当然のように後半はラップが速くなり、レースの上がり3ハロンは11秒8-11秒2-11秒5の34秒5だった。そんな競馬の中、新馬と500万下を連勝して挑んだキタサンブラックが勝利をものにした。3戦無敗で皐月賞に乗り込むことになる。

◆1着 キタサンブラック(5番人気・1番枠) 北村宏司
最内1番枠からのスタート、ヤネは500万下勝ちに続いて2度目の騎乗となった北村宏司。ゲートの出は五分で、北村が少し押して勢いをつける。タケデンタイガーが行く構えを見せ、1コーナーで引いて2番手に収まった。

自身はかなり遅いペースで走っているわけだが、もともと行きたがるタイプではなく、しっかりと息を入れて追走していた。向正面も半ばを過ぎると外からダノンメジャーが並んできて、3コーナーからメジャーと一緒に上がっていった。

4コーナーでは3頭並びの真ん中。ただ、まだ本格的にはペースアップしておらず、抑えたままでまったく楽な手応えだった。直線入り口で北村が仕掛けて出て、直線に入って引き離しにかかった。

残り200mを過ぎ、100mでも後続との差は2馬身以上。最後は物見をしたようで勢いが少し鈍ってリアルスティールが一気に追い込んできたが、これをクビだけ凌いだところがゴールだった。勝ち時計はスローの分で1分49秒1(良)と遅く、自身の上がりは34秒4だった。

スローの中で前でロスなく運べて恵まれた感じはある。ただ、400m~200mを11秒2のラップでしっかりと走っているし、勝ち切ったことを評価すべきだろう。

当日の馬体重は増減なしの504キロだった。大型馬で少し緩いところはあるが、それで結果が出ているわけだし、まだ成長する余地が残っているということでもある。

血統面を見ると、父がブラックタイドで、母の父がサクラバクシンオー。母系からはアドマイヤフライト(日経新春杯2着)が出ている。少し地味といった感じか。

皐月賞の施行日は4月19日になり、中5週で迎えることになる。今回のようなスローにはまずならないが、新馬戦では後方の外を進んで終いを伸ばしているし、ペースに応じた競馬ができるだろう。歌手の北島三郎さんが馬主ということもあり、大きな注目を集めることになる。

◆2着 リアルスティール(1番人気・6番枠) 福永祐一
6番枠からのスタート、ヤネは主戦の福永祐一。ゲートの出は五分で、無理には出さずにタメにかかる。タテ位置は中位の少し後ろになり、タイトではない馬群の中を抑えつつ進む形になった。

後半のコーナーに入ってもじっくりと構えたままで、4コーナーに来て外を回しながら押していった。スティールはもともとフワフワするところがあり、もう少し早く気合をつけてもよかったのではとも思う。

直線に入ってすぐにはスイッチは入らず、内の各馬も伸びているのでなかなか差が詰まらない。残り100mからグッと加速した感じになり、最後は一気に追い込んでクビ差の2着で入線した。

共同通信杯(1着)から中4週での競馬になり、馬体重は6キロ増の506キロ。全体に少し余裕があり、目一杯に仕上げていない感じだった。スローの中で仕掛けを遅らせたことといい、“あくまで前哨戦”として臨んでいたのだろう。

反動が出なければ、攻めを強化して締まった体で皐月に挑むことになるだろう。初めてになる2000mにも対応できるはずだし、キタサンブラックと同様に主力の一角を担うことになる。

◆3着 ダノンプラチナ(2番人気・8番枠) 蛯名正義
8番枠からのスタート、ヤネは主戦の蛯名正義。ゲートの出は五分で、気持ちが乗ってスッと出ていく。蛯名が引いて下げて、バラけた中位の追走になった。スローの中でも何とか抑えは利いていた。

そのままレースが進み、3コーナーを過ぎて軽くうながして外を少し上がる。直線に向いて余力があって追い出しを待ち、残り250mに来てようやく蛯名が本気でしごき出した。

スッと脚を使って2番手に上がったが、急坂のところでは少し頭が高くなって感触はもうひとつだった。伸びてはいるのだが、弾けるまではいかず、外からスティールに鋭く交わされて3着に終わった。

朝日杯フューチュリティSを勝って以来で3ヵ月ぶりの実戦。攻めは美浦のウッドで大きめを入念に乗るという調整で、ビシッとは追っていなかった。当日は増減なしの472キロ。いかにもバネのありそうな体つきで太め感はなかったが、実が入り切っては部分はあったと思う。

リアルスティールとは逆で一生懸命に走りすぎる気性。攻めで追い込まなかったのと、実戦で仕掛けを遅らせたのは、2000mの皐月賞を見据えてのことだろう。スティールと同様に、“本番前の試走”という意味合いが強かった。

攻めを強くすると実戦で行きたがる危険性が増すし、どんな調整をしていくかは注目されるところだ。体型的にはマイラーで、ただ、チグハグな競馬になりながら朝日杯フューチュリティSを快勝したようにスタミナはある。噛み合えば皐月でも争覇圏に食い込んでくるだろう。