阪神の内回り芝3000mで争われた天皇賞(春)の前哨戦。芝はAコース使用4週目になり、パワーとスタミナがないと乗り切れないタフな馬場状態だった。
レースはスズカデヴィアスとメイショウカドマツがテンに競り合いを演じるという幕開けになった。2ハロン目が10秒5と短距離戦のようなラップで、3ハロン目が11秒5。その後に落ち着くことにはなるのだが、テンの3ハロンは34秒7という速さだった。
4ハロン目からの1000mは65秒2とゆったりペース。残り1000mを切って徐々にピッチが上がり、後半の1000mは60秒5だった。上がりの3ハロンは、12秒0-11秒7-12秒2の35秒9である。
そんなペースに変動のある競馬の中、断然の1番人気に推されていたGI5勝のゴールドシップが勝利をつかみ取った。得意の阪神で底力を見せつけた形で、阪神大賞典3連覇となった。
◆1着 ゴールドシップ(1番人気・8番枠) 岩田康誠
8番枠からのスタート、ヤネは昨年の当レースでも手綱を取っていて、2つ前の有馬記念(3着)から続けて騎乗している岩田康誠。ゲートは五分に出たが、いつも通りダッシュが鈍くて岩田がしごいているのに最後方に下がる。少し行って流れに乗ると、岩田はそれ以上は押さなかった。タテ長の展開の中で中位の後ろを進む形になった。
道中は適度な闘争心を見せて感触の良い追走ぶり。昨年は2番手につけて力むところがあったが、今年は全体にスムーズだった。向正面の中ほどに来ると岩田が少し押して好位の外にポジションアップし、抑えてまた息を入れた。
3コーナーを過ぎてもじっくりと構えていて、4コーナーに来て岩田が強く押して仕掛けて出る。直線入り口で先頭に並び、直線に入って早々と抜け出した。外からは斤量が4キロも軽いデニムアンドルビーが伸びてきていたが、簡単には並ばせない。結局、最後まで脚色が衰えることはなく、1馬身1/4差の1着でゴール板を駆け抜けた。
勝ち時計は3分05秒9(良)で、自身の上がりは35秒5。昨年はラスト1ハロンを11秒9で駆けて驚かせたが、競馬の質を考えると、今年の12秒2も驚異的である。さらに岩田は「レース後に息が入っていたということなので、まだ本気で走っていないのかもしれない」と話してる。恐ろしいまでのスタミナだ。
当日の馬体重はアメリカJCC(7着)から8キロ減って508キロ。栗東のコースと坂路でしっかり乗っていたし、太め感のない体で動ける仕上がりにあった。このあとは放牧に出す予定という。
春の目標は宝塚記念(6月28日)に置いていて、天皇賞(春)(5月3日)を使うかはわからないとのことだ。ご存知のように、上がりが速くなる京都では不安定な戦績である。ゴールドが最も力を出せる条件だけを走らせてあげるというのも、馬にとってはいいことかもしれない。
◆2着 デニムアンドルビー(7番人気・2番枠) 浜中俊
2番枠からのスタート、ヤネは主戦の浜中俊。ゲートが開いてポンと好スタートを切り、行かせずに自然と下がってゴールドシップの内につける形になった。道中は息が入ってリズムの良い追走ぶりだった。
2コーナーでゴールドが少し前に行き、向正面の半ばを過ぎてゴールドが動くと、あとを追って押し上げる。とにかく浜中が徹底的にゴールドをマークして誘導していた。4コーナーでゴールドが仕掛けると、すぐにしごいていく。直線で半ばで並びそうなところまでいったが、最後は相手の底力に負けた。
54キロ対58キロでの結果だから完敗ではあるが、阪神の長丁場はゴールドのステージである。3000mを走るのは初めてで、しかも力の要る馬場の中を自在に動いて最後まで脚を使ったのだから、収穫の多い一戦だった。強い牝馬である。
◆3着 ラストインパクト(2番人気・1番枠) 菱田裕二
最内1番枠からのスタート、ヤネは有馬記念(7着)に続いて2度目の騎乗だった菱田裕二。ゲートの出はひと息で、そのまま抑えて後方のインの追走になる。デニムアンドルビーから離れること3馬身ほどで、道中はずっとその形が続いた。折り合いはスムーズだった。
向正面でゴールドとデニムが動いた時についていかず、3コーナーを過ぎて少し押して外を上がってデニムの後ろにつけた。ゴールドをデニムがマークし、デニムをラストがマークするというような競馬になった。
直線で2頭を追ったが、どちらも脚を使っていてなかなか迫れない。残り200mを過ぎて坂で走りづらそうな感じになり、結局は2頭に離されて3着に終わった。2000m~2400mの距離で瞬発力を活かすのがベターである。