レース回顧 中山牝馬S

中山の芝1800mで争われた牝馬同士のハンデ重賞。芝はAコース使用3週目になり、内めが少し荒れていて、外めからの差しが決まるケースが多く見られた。

ハナを奪ったのはミナレットで、これを行きたがったサクラプレジールが突く形になった。2頭で後ろを少し離し、3ハロン通過が36秒1。4ハロン目からも11秒5、11秒6とラップが落ちず、1000m通過は59秒2と速めの数字になった。

結果、レースは後方待機勢が上位を占めることになる。勝ったのはハンデ54キロの4歳馬バウンスシャッセだった。なお、後半4ハロンのラップは11秒9-12秒4-11秒8-12秒4となっている(上がり3ハロンは36秒4)。

◆1着 バウンスシャッセ(3番人気・3番枠) 田辺裕信
ハンデは54キロ。内の3番枠からのスタートで、ヤネはテン乗りで田辺裕信だった。ゲートの出は速くなく、田辺は無理にはいかせず抑えていく。レースが流れたことでタテに長い展開になり、後方4番手を進む形になった。

外に構えて田辺らしい騎乗。バウンスはというと、気持ちが乗っているものの息は入っていて、後半に備えて上々の追走ぶりだった。3コーナーからは大外を攻め、楽な手応えのままジワジワと前との差が詰まっていった。

直線に向いて大外を叩き出し、バウンスはしっかり反応してスピードを上げにかかる。残り200mを過ぎてからも脚を使い、最後は内から出ていたアイスフォーリスをねじ伏せるように交わして勝利をものにした。着差はクビで、勝ち時計は1分47秒5(良)、自身の上がりは35秒0だった。

3歳の春にオークスを3着(スムーズならVがあった)したあとはリズムが悪かったが、藤沢和雄師が馬の気持ちを抑えることに重点を置いた調整を行ってきて、田辺も稽古に乗って感触をつかんでいた。それが実戦で実を結び、“豪快に差す”というこれまでにない形で結果を出すことができた。

姉のフロアクラフト(現準オープン)も兄のホーカーテンペスト(現オープン)も気持ちが強すぎるところがあり、そんな血が出てきたものと思う。これからは今までより少し短い距離を使っていく予定で、春の大目標はヴィクトリアマイル(5月17日)に置いているとのことだ。まだ4歳で、さらなる飛躍が楽しみである。

◆2着 アイスフォーリス(4番人気・8番枠) 三浦皇成
ハンデは54キロ。8番枠からのスタートで、ヤネは同馬に跨って準オープンを勝っている三浦皇成だった。ゲートの出は五分だったが、行き脚はあまり速くない。三浦も出してはいかず、中位をポツンと進む格好になった。

道中の走りはスムーズで、後半のコーナーは馬群に入る形になった。4コーナーで少し押して前との差を詰め、直線の立ち上がりではガラッと前が開いてロスなく追い出すことができた。

アイスはしっかりと伸び、残り200mを過ぎて先頭に躍り出る。そのまま脚を使って押し切るかと思われたところ、最後は少し鈍った感じになり、そこをバウンスに差された。

6歳でこれが引退レース。3歳時にオークスで3着するなど活躍したが、重賞を獲れずにターフを去ることになった。父はステイゴールドで、3代母がキングジョージ6世&クイーンエリザベスS、愛オークスなどGIを10勝した歴史的名牝ダリア(Dahlia)。強い仔を産んでもらいたい。

◆3着 パワースポット(5番人気・15番枠) 大野拓弥
ハンデは53キロ。大外15番枠からのスタート、ヤネは主戦の大野拓弥だった。ゲートの出は上々だったが、抑えて下げ、レースが流れてポツンと離れた最後方を進むことになった。末一手のタイプでも行きたがるケースがあり、大野は慎重に抑えていた。

後半のコーナーは外に構えて動さず、4コーナーでジワッと詰めていく。直線に入る少し前でケイティバローズの外に持ち出してかなり外を回り、大きなロスが生まれてしまった。それでも直線に向くと最外からグイグイと伸び、疲れずに最後まで脚を使って3着に上がった。

レースが流れてタテに長い競馬になっていたので、4コーナーで外に出さずに捌いていけば開いていた可能性が高い。まあ、もともと大外を攻めると決めていたのだろう。7歳の牝馬でも着実に地力を底上げしていて、今後も注目される。

◆5着 シャトーブランシュ(1番人気・13番枠) 戸崎圭太
ハンデは53キロ。13番枠からのスタートで、ヤネはテン乗りで戸崎圭太だった。ゲートの出は五分で、戸崎が少し押し、馬も気持ちが乗って前にいく。1コーナーで抑えて下げ、好位の後ろの外を進む形になった。

向正面ではさらに下がってバラけた位置の追走になる。後半のコーナーに入って少しフワフワしている感じがあり、4コーナーでは外から被されて動きづらくなった。もともと勝負どころの反応がいタイプではない。

直線も少し前が邪魔な感じでモタモタしていて、アイスの後ろに入れていく。ジリジリとは脚を使ったが、ギュンとは伸びず、大きな見せ場はなしに5着に終わった。

器用さがないので初の中山に対応できるかがポイントだったが、忙しい競馬になって少しバタついてしまった。広いコースでじっくりと構え、持久力ある末脚を活かすのがいいだろう。あと、時計は少しかかってくれた方がいい。5歳になったが、まだまだこれからである。