レース回顧 弥生賞

本番と同じ舞台で行われた皐月賞のトライアル競走。芝はAコース使用2週目になり、雨が降った影響で稍重の中での戦いになった。

先導したのはジャストフォーユー。ジャストは500万下からの格上挑戦だったが、そうペースを落とさず、レースはタテに長い展開になった。3ハロン通過は36秒2で、1000mは61秒3という数字だった。

6ハロン目からの2ハロンは12秒0-12秒1で、上がりの3ハロンは12秒1-11秒9-12秒4の36秒4。渋った馬場の中でタフな競馬になり、差し馬が上位を占める結果となった。勝ったのは2戦2勝で挑んだ堀宣行厩舎(美浦)のサトノクラウンだった。

◆1着 サトノクラウン(2番人気・4番枠) 福永祐一
4番枠からのスタート、ヤネは新馬戦で手綱を取っていた福永祐一。ゲートの出は上々で、前向きさがあってスッと出ていく。馬群の中に突っ込んでハミを取っていたが、2コーナーで下げると落ち着いて走るようになった。タテ位置は中位だった。

向正面では気を抜くところがあるぐらいの感触になっていた。そして、3コーナー前に来て、福永が少し手を動かして気持ちを乗せる。これでガッと行くことにはならず、外をジワジワと詰めていった。4コーナーでも手応えは十分で、ここからハミをかけにかかった。

直線に向いて、トップギアに入った感じでもないのに、すぐに先頭に並びかける。残り200mを前にして早くも抜け出し、ここで初めて福永が目一杯に追ってムチを入れた。クラウンは1頭になってからもしっかりと脚を使い、外から伸びてきたブライトエンブレムに並ばれることなく、先頭でゴール板を駆け抜けた。

着差は1馬身半差。勝ち時計は馬場を考えると優秀と思える2分01秒8(稍)で、自身の上がりは35秒7だった。ゴールした時にまだ余力が残っていて、相当に強い勝ちっぷりだった。なお、東京スポーツ杯2歳Sの時に枠内の駐立が悪かったため、発走調教再審査を課せられていた。1週前にゲート試験に合格して、実戦でも問題なかった。

父はセントジェイムズパレスS(8F)1着や英ダービー(24F)2着があるマルジュー(Marju)で、その父はラストタイクーン。母系を調べると、全姉にイギリスのGI勝ち馬がいて、血統面はしっかりしている。距離に関しては、体の形も合わせて考えると、マイル~2000mがいいだろう。ただ、能力の高さで、もっと長い距離を克服する可能性がある。

次は大舞台の皐月賞(4月19日)。福永には共同通信杯勝ちのリアルスティールがいて、誰が乗ることになるのか決まっていない。いずれにしても、有力候補として大きな注目を集めることになる。

◆2着 ブライトエンブレム(4番人気・5番枠) 田辺裕信
5番枠からのスタート、ヤネは主戦の田辺裕信。ゲートが開いて少し左にヨレ、外と接触してしまう。トモが入らないのいつものことで、今回はまあマシな方だったろう。田辺はそのまま抑え、タテ長の競馬の中で離れた後方2番手を進む形になった。

道中は少し気持ちが乗っていて、軽く抱えているといった行きっぷり。そして、3コーナーからは、ブライトがどうこうでなく、田辺がお約束とする誘導が発動される。少しずつはあるが外を詰めていき、4コーナーは最外。ここで当然のように振られて少し外に逃げることになり、大きなロスが生まれてしまった。

それでもブライトは直線に入ってグッと伸びる。残り200mで2番手に上がり、そこからも脚を使ってクラウンを追った。しかし、相手に止まる気配がなく、最後は息も続かない感じになって2着に終わった。

レース後に田辺は「ゴールを過ぎて、1~2コーナーの感じがよかった」と話している。あれだけ外を攻めて脚を使えば無酸素運動になる部分で苦しくなるのは当然で、しかし、大元のスタミナが切れたわけではなかったようだ。

母は秋華賞を勝ったブラックエンブレム。体も気性も若いといった印象だが、そんな段階で一線級で活躍するのだから能力は相当なものがある。本番でも時計と上がりが少しかかるような競馬になるとチャンスがあるかもしれない。ただ、どうせ田辺は大外を回す競馬をするだろう。

◆3着 タガノエスプレッソ(10番人気・2番枠) 菱田裕二
内の2番枠、ヤネは2度目の騎乗になった菱田裕二。ゲート内でうるさくしていて、アオッて出てしまう。少し脚を使って出ていき、タテ長の中位を進む形になった。向正面で内からクラウンに並ぶシーンがあったが、クラウンは先に動いていった。

3コーナーからはインでじっくりとタメ、4コーナーから直線にかけては前が詰まり気味で動いていけない。それでも結果的に脚が溜まったか、狭いところを渋太く伸びて最後で3着に上がった。

気性が強く、体型的にもマイルあたりがいいように感じるが、今回はタメを利かせて渋った馬場の中距離で脚を使った。馬体自体は目立つものがあり、強くなっていく可能性がある。

◆7着 シャイニングレイ(1番人気・3番枠) 川田将雅
3番枠からのスタート、ヤネは主戦の川田将雅。ゲートが開いてしっかりと出て、自然と流れに乗る。そのまま我慢できればよかったが、少し行くと強くハミを噛み、頭を上げて制御が利かなくなった。

ジャストフォーユーの逃げから少し離れた2番手。しかし、道中もハミが抜けてくれない。川田は4コーナーでも手綱を持っていて直線で先頭に出て追いに入った。が、弾ける余力は残っておらず、クラウンにすぐに交わされてしまう。すこしだけ頑張りを見せたが、最後は完全に脚が上がって7着に落ちた。

パドックでは落ち着いて周回していたのだが、返し馬からテンションが高くなり、実戦でまともに掛かって結果を出すことができなかった。川田は「血統的に引っ掛かりやすい」と話していて、そんな心配が悪い方に出てしまった。今後も折り合い面の不安がついて回ることになる。

ちなみに、馬主はキャロットファームで、お馴染みの緑と白のボーダー風の勝負服。この勝負服で弥生賞というと、2年前のエピファネイアを思い出す。エピファもシャイニングと同じく1番人気に推され、やはり実戦でまともに掛かって4着に敗れた。エピファも良血馬だが、良血馬というのは気性の面でも体質の面でも難しいところがある。