素質ある3歳の牡馬がぶつかり合ったGIII競走。芝はDコース使用3週目になり、内めは禿げた状態だった。逃げ切りもあったが、馬場の内めから中ほどを攻めた馬が最も伸びる感じだった。
レースを引っ張ったのはシゲルケンカヤマ。テンの3ハロンは12秒7-11秒1-11秒4の35秒2で、中盤でペースを落として1000mの通過が60秒0になった。6ハロン目も12秒6と遅かった。
上がりの3ハロンは11秒8-11秒0-11秒7の34秒5と速い数字になった。そんな決め手勝負の中、勝ち切ったのはキャリア一戦で臨んだ西のリアルスティールだった。1番人気のドゥラメンテは2着に終わっている。
◆1着 リアルスティール(3番人気・1番枠) 福永祐一
最内1番枠からのスタート、ヤネは新馬勝ちに続いて福永祐一。ゲートが開いて一完歩めは普通に出たが、次に物見をしたか飛ぶように外に逃げ、2号馬と3号馬に迷惑をかけてしまう。バカついて首を振り、2コーナーに入るところでようやく態勢が整って好位のインにもぐり込んだ。
向正面は落ち着いていてスムーズな追走ぶりで、3コーナーに入ってからもロスなく体力を残しつつ走れていた。そんな感じのままで直線に入り、走路が開けばグッと伸びそうな感触だった。
福永は外に動かして脚がありそうなアンビシャスの後ろに入れた。そして、アンビシャスと外のミュゼエイリアンの間を割りにかかる。抜け出しそうなところで、外から人気のドゥラメンテが飛んできた。
一旦は前に出られたが、これで気持ちに火が付いた。前向きにしっかりと脚を使い、相手も少し鈍ったことで内からがグッと出る。そして、半馬身差の1着で勝利をつかみ取った。勝ち時計は1分47秒1(良)で、自身の上がりは34秒0。ゴールした時に余力が残っていたことが強く印象に残った。
昨年の暮れに阪神芝1800m(外)でデビュー勝ち。直線でフワフワとしながらも素晴らしい脚力を見せて悠々と先頭に立ち、余力十分に押し切る圧巻の内容だった。
今回、メンバーが一気に強くなり、ペースが違っても同様に質の高いパフォーマンスを見せることができた。前走比2キロ増の500キロで輸送はクリアしたようだし、左回りにも対応できた。非凡なセンスと能力の持ち主である。
このあと、まずは三冠緒戦の皐月賞(4月19日)に挑むことになる。次走は未定で、スプリングS(3月22日)が候補に挙がっているようだ。ディープインパクト産駒の大物が誕生した。
◆2着 ドゥラメンテ(1番人気・8番枠) 石橋脩
8番枠からのスタート、ヤネは500万下勝ちの前走に続いて石橋脩。ゲートが開いてしっかりと出脚がつき、行き脚もスムーズだった。石橋が抑えて下げてタメにかかるが、馬にスイッチが入ってしまった。
首を上げて行きたがり、石橋が抑えるのに必死。少し下がる形になって馬群に入ったが、それでも息はつけなかった。3コーナーあたりで少し落ち着いたものの、リラックスした状態ではなかった。
直線に向いて外を仕掛け、いつも通り頭が高くなりながらもグッと伸びる。残り200mで先頭に出たが、最後はさすがに疲れてしまい、スティールに内から出られて2着に終わった。
今回は500万下を勝って中1週。当然のように使うかどうか慎重になり、最終的に出走を決めた。500万下勝ちでは「もういいだろう」と思うのに、突き放したあとも最後までビシッリ追っていた。これが今回の掛かったことにつながったと思う。
それにしても、あれだけ行きたがったのに、直線で一旦は先頭に出て2着するのだから脚力はスゴイ。母はエリザベス女王杯を連覇した名牝アドマイヤグルーヴ。頭が下がらないのはまだしっかりしていないからで、本格化した時が楽しみだ。
◆3着 アンビシャス(4番人気・10番枠) C・デムーロ
10番枠からのスタート、ヤネはテン乗りでクリスチャン・デムーロ。ゲートの出は速くなく、クリスチャンがうながして流れに乗せていく。ハミを取ってジワッと3番手に上がり、ここで手綱を抑えた。
道中はクリスチャンらしい“適度に遊ばせながら体力を残す”という誘導だった。説明するまでもないが、競走馬は極端に頭が悪く、気持ちが乗らなければ走ろうとしないし、逆に狂ったように暴走することもある。もちろんクリスチャンだってうまく抑え込めないことはあるが、一人だけレベルが違って難しい競走馬を自在に操ってくる。
共同通信杯のあとの12Rでは1番人気のキネオイーグルを1着に持ってきた。このレースも勝負どころ、直線と気持ちを入れたり抜くところをつくったり、人馬一体で普通ではあり得ないコンタクトを見せていた。
話をアンビシャスに戻そう。直線に向くと、クリスチャンが追いを強めてピッチを上げる。そして、残り400mで早くも先頭に立った。普通なら早すぎるのが、上にも書いたようにクリスチャンは息が入る瞬間をつくりながら追っているので、最後まで脚を保たせることができる。
先頭に立ってソラをつかったところもあり、後ろから伸びてきたスティールとドゥラメンテに交わされる。それでも大きくはバテていたわけではなく、3着はしっかりと守ってゴールした。
京都の新馬、阪神の500万下と、非凡な瞬発力で抜け出し、十分に余力を残して勝利するという内容だった。同じディープインパクト産駒のスティールと同様に、底知れない能力を感じさせていた。
今回、初の1800m、初の長距離輸送、初の左回りを克服したことで、先への期待が広がった。ただ、胴が詰まり気味の体型で、距離は2000mぐらいまでかもしれない。
◆5着 アヴニールマルシェ(2番人気・3番枠) 北村宏司
内の3番枠からのスタート、ヤネは主戦の北村宏司。ゲートが開いて出脚は遅かったが、トモの入りが悪いのでこんなものである。問題はそのあと。内のスティールが外に飛び、影響を受けて大きく外に逃げることになってしまった。もちろンポジションは下がり、後方の追走になった。
向正面、コーナーとじっくりと走らせ、直線でドゥラメントの後ろに入って叩き出す。が、姿勢が高くて推進力が甘く、ドゥラメンテに一気に引き離されてしまう。ジリジリと脚を使ったが、5着という結果に終わった。
確かにスタート後のロスは痛かったが、直線の頼りない走りは残念だった。出脚がつかないのはトモがしっかりしていないからだし、ディープ産駒でもあって弱さが残っている。藤沢和雄師はレース前に「ここで力関係がわかる」と話していた。現時点での限界が見えた感じはあり、今後の成長に期待したいところだ。